【25.01.12】NO.2257 国の第7次エネルギー基本計画 原発は温暖化対策に有効か?
原発依存は「低減」→「最大限活用」へ 再エネ目標は4〜5割程度
昨年12月、政府の第7次エネルギー基本計画の原案が公開され、パブリック・コメントにかけられています。原案では、「東京電力福島第一原子力発電所事故の経験と反省」を掲げつつ、原発事故以降維持されてきた「原発依存の低減」が削除され、「最大限活用」とされました。原発の建替えについても認めています。
原発は「海暖め装置」 温暖化対策にならない
「原発は発電時にはCO2を排出しないので地球温暖化対策になる」というのが政府の原発回帰の主な理由。発電方法の環境影響を考える場合、その設備の建設、燃料の調達から、廃棄物処理、稼働時の排出エネルギー、設備の廃棄までをトータルで評価する「ライフサイクルアセスメント」が必要であることは科学者の常識です。電気自動車は運転時にはCO2を出しませんが、充電時に石炭火力の電気を使えば、環境対策になりません。原発の燃料である燃料棒の製造時、使用済み燃料棒の廃棄時には大量のCO2を排出しています。さらに稼働時には原発1基当り、1秒間に70トンの海水を7℃暖めて海に放出しています。この水量は一級河川の流量に匹敵します。まさに地球温暖化促進設備と言えます。
原発の発電コストは安くない
政府が発表する電源別の発電コストは原発の発電コストが安いとされていますが、これは現状の設備で発電するときのコストだけを計算した場合で、福島原発の廃炉費用や使用済み燃料の廃棄の費用等は入っておらず、国民の税金や電気料金への上乗せで負担されたり、1兆円を超えるとされる新築原発のコストも入っていません。全てを電気事業者の経費としたら到底採算が合いません。
放射性廃棄物の処理方法はまだ確立されていない
原発は以前から「トイレなきマンション」と言われて、使用済み燃料棒や廃炉での放射性廃棄物の処理方法が確立しておらず、使用済み燃料と、再処理後の高濃度放射性廃棄物がたまり続けています。数兆円をかけた再処理工場は稼働できておらず、最終処分場もありません。
原発は地震に弱く、 テロ・戦争の標的にも
原発が地震に弱いことは福島を始め、新潟、能登地震でも明らかです。ロシアのウクライナ侵略でも原発を占領され、危険な状況が生まれました。稼働中の原発がテロや戦争の標的にされたら、ヒロシマ原爆の何十倍もの被害が出ます。
世界で進む再エネ普及 「再エネ100%」へ
最近、世界の再エネコストが急速に低下し、従来電源(火力発電や原発)と同程度かより安価になりつつあります。最も安価な電源は風力発電か太陽光発電になっています。
再エネですべての電力やエネルギーを賄う「再エネ100%(RE100)」を目指す動きが多数の国や自治体、地域、企業に広がっています。2018年時点で、世界の56か国と280自治体がRE100を表明しています。それらの国は風力、太陽光・熱に水力、バイオマス、地熱等を組み合わせてRE100を目指しています。先進国はアイスランド、デンマーク、スウェーデン等です。企業でもアップル社、マイクロソフト社など81社が目標を達成しています。日本企業ではセイコーエプソン、楽天、旭化成、イオン、花王等もRE100を進めています。 第7次基本計画は、火力・原発の稼働で再エネ普及を抑え、40年目標もわずか4〜5割としており、非常に消極的な目標です。
地球温暖化対策で世界からとり残される計画と言わざるをえません。